(※数式が見切れている場合は横スクロールしてください。)
さてさっそくですが、\(\sin\)の微分を定義に従って計算してみましょう。
&\lim_{h\to 0}\frac{\sin(x+h)-\sin x}{h}\\
=&\lim_{h\to 0}\frac{2\cos(x+\frac{h}{2})\sin \frac{h}{2}}{h}\\
=&\lim_{h\to 0}\cos(x+\frac{h}{2})\frac{\sin \frac{h}{2}}{\frac{h}{2}}\\
=&\cos x
\end{align}
割と変形は今までに出てきたものばかりだったはずです。1つ目の等号のところでは、和積の公式を分子に適用しました。
2つ目の等号のところでは、三角関数の極限の公式を使いやすくするために変形をし、3つ目の等号で極限の公式を使いました。
これで\(\sin\)の微分で\(\cos\)が出ることがわかりました。後の問題にしますが、\(\cos\)と\(\tan\)もこれまでの知識を用いると微分することができます。
公式
&\frac{d}{dx}\sin x=\cos x\\
&\frac{d}{dx}\cos x=-\sin x\\
&\frac{d}{dx}\tan x=\frac{1}{\cos^2 x}\\
\end{align}
この公式については毎回微分して導出するようなものでなく、覚えておく類のものなので、覚えてから次に進むのがいいですね。
問題
上の公式を導出せよ。
解答
\(\sin\)はすでに導出しましたので、\(\cos\)と\(\tan\)だけ導出します。
&\lim_{h\to 0}\frac{\cos(x+h)-\cos x}{h}\\
=&-\lim_{h\to 0}\frac{2\sin(x+\frac{h}{2})\sin \frac{h}{2}}{h}\\
=&-\lim_{h\to 0}\sin(x+\frac{h}{2})\frac{\sin \frac{h}{2}}{\frac{h}{2}}\\
=&-\sin x
\end{align}
これで\(\cos\)の微分については導出できました。あとは\(\tan\)ですが、これは\(\sin\)と\(\cos\)の微分が分かっていれば、定義に従って計算する必要はありません。商の形の関数の微分ができれば導出できます。
&\frac{d}{dx}\tan x\\
=&\frac{d}{dx}\frac{\sin x}{\cos x}\\
=&\frac{\cos x\cos x-\sin x(-\sin x)}{\cos^2 x}\\
=&\frac{1}{\cos^2 x}
\end{align}
これで微分の公式は導出できました。引き続き数問ほど問題を解いて、三角関数の微分に慣れておきましょう。
問題
以下の計算をせよ。
&1.\quad \frac{d}{dt}\sin(\omega t+\theta)\\
&2.\quad \frac{d}{dx}\cos(\sin x)\\
&3.\quad \frac{d}{dx}\frac{1}{\cos x}\\
&4.\quad \frac{d}{dt}\sqrt{\tan 2t}\\
&5.\quad \frac{d}{dx}(\sin^2 x+\cos^2 x)\\
\end{align}
解答
1.
合成関数の微分を忘れずに使えれば、難しくない微分です。
&\frac{d}{dt}\sin(\omega t+\theta)\\
=&\omega \cos(\omega t+\theta)
\end{align}
2.
これも同じく合成関数の微分です。
\frac{d}{dx}\cos(\sin x)=-\sin(\sin x)\cos x
\end{align}
三角関数の中にさらに三角関数が入っているので、ぱっと見よくわからないと思うかもしれませんが、別に問題はありません。慣れてください。
3.
こちらは商の形の微分を覚えていればできますね。もちろん合成関数だと思っても計算できますよ。
\frac{d}{dx}\frac{1}{\cos x}=\frac{-\sin x}{\cos^2 x}=-\frac{\tan x}{\cos x}
\end{align}
4.
&\frac{d}{dt}\sqrt{\tan 2t}\\
=&\frac{1}{2}\frac{1}{\sqrt{\tan 2t}}\frac{2}{\cos^2 2t}\\
=&\frac{1}{\cos^2 2t\sqrt{\tan 2t}}
\end{align}
ちょっと面倒なのは2回合成関数の微分の考え方を使わなければいけないところですかね。
5
これは騙されなければいいだけです。微分の前に中身の整理をすると、\(1\)を微分したものだとわかります。
よって答えは\(0\)です。
この調子で三角関数の積分まで一気に進めてしまいましょう。積分は微分の逆なので、覚えるべき公式は3つだけです。
公式
&\int \sin x dx=-\cos x+C\\
&\int \cos x dx=\sin x+C\\
&\int \frac{1}{\cos^2 x} dx=\tan x+C\\
\end{align}
当たり前ですけど、微分の逆になっているだけです。微分と積分が頭でこんがらがって、符号を間違えるパターンが結構多いので注意してくださいね。さっそく、簡単な問題をいくつか解いておきましょう。
問題
&1.\quad \int \sin 2xdx\\
&2.\quad \int \frac{\sin^2 x+1}{\cos^2 x}dx
\end{align}
解答
1.
最初の問題くらいなら変数変換せずともいけるくらいには慣れているのが好ましいですが、以下の解き方が難しかったら、\(2x=t\)っていう風に置いてみてください。
&\int \sin 2xdx\\
=&-\frac{1}{2}\cos 2x+C
\end{align}
大事なのは、右辺を微分したときに、左辺の被積分関数が出てくることです。それさえ意識できれば、これくらいは暗算でできるようになります。
2.
これは分子を2つに分解するだけの問題です。
&\int \frac{\sin^2 x+1}{\cos^2 x}dx\\
=&\int\frac{2-\cos^2 x}{\cos^2 x}dx\\
=&2\int \frac{dx}{\cos^2 x}-\int dx\\
=&2\tan x-x+C
\end{align}
関連リンク
>>YouTubeで使用可能な数学と物理の参考書「アラサー高校物理」