こちらは【教え方の教科書】の中の1記事になっています。
今回は宿題の量について詳しく説明しています。
宿題の量は新人講師の皆さんはほとんどの場合、少なすぎます。前の記事でも解説はしましたが、ここでは改めて詳しく解説していきます。
宿題の量で意識するポイントは2つ!!
宿題の量はかなり重要です。
まず絶対に忘れてはならないこととしては、講師が1回で覚えられることでも生徒さんは3回4回必要になることが頻繁にあるということです。
すなわちほとんどの新人講師の皆さんは宿題量が足りていません。
またせっかくやる気があっても講師から出された宿題が終わってしまったら生徒さんは次に何をやればいいのか分かりません。結果として、勉強時間が減っている可能性があります。これは生徒さんが悪いのではなく確実に講師が悪いという例です。
ですから、十分量という意味では以下の2つを特に注意しなければなりません。
- 回数が十分か
- 勉強時間が十分か
回数が十分か
冒頭にも書きましたが、講師の皆さんが1回でAという内容を覚えられたとしても、生徒さんは3回4回かけないとAという内容を覚えられないというのは本当によくあることです。
なぜなら一般的に暗記の能力はそれまでに持っている知識量に依存するからです。小学1年生には覚えるのが難しい漢字も6年生になるころには苦労せずに覚えられるようになっています。
それまでに他の漢字を覚えてきていることで、それぞれの部首がどういう意味か認識していて、覚えようとする漢字のイメージが連想しやすいからというのが1つ、そして暗記に慣れているということが1つ、という風に暗記の能力が上がっていくからです。
講師の皆さんと生徒さんの同じ時期を比べると、ほとんどの場合は講師の方が同じ時点での知識量が豊富なはずです。ですから、講師と同じ量だけの宿題では生徒さんは覚えるべきことを覚えられません。
基本的に全ての内容は3周以上必要という前提に立って宿題は計画していきましょう。
全ての内容を3周するのは確かに簡単ではありまさんが、1回解いてバツだったものだけを2周目、2回解いてバツだったものだけを3周目として取り組めば多少マシにはなります。
3回解いても覚えられないものも生徒さんによってはありますから、その場合は4回目5回目と覚えるまで繰り返します。
覚えた量が増えれば増えるほど、後半にかけて暗記の要領も良くなってきますので、受験期前半から中盤にかけては辛抱強く付き合うしかありません。
ちなみに、
は禁句です。1回の授業で理解できて、暗記できるのであれば、学校の授業で十分なのです。講師は自分の力を過信してはいけません。1回の授業で覚えさせるほどの超能力は講師には使えませんので。
あくまでも生徒さんが宿題をこなして自分で手を動かしたときに記憶に定着するということを理解しておきましょう。
勉強時間が十分か
例えば、1週間に毎日担当している科目の宿題を1時間ずつ進めるとすると、最低でも7時間分の宿題を準備する必要があります。
7時間の宿題を準備しようとするとほとんどの場合、授業中に進めている内容・単元付近の問題数では足りません。これはほぼ全ての科目について当てはまることだと思います。
このことを意識していないがために宿題量が少なく、生徒さんに暇な時間を過ごさせたり、無駄な勉強をさせたりしてしまうのです。
ではどうしなければならないでしょうか。宿題の構成を見直してみましょう。私は必ず次のような構成にしています。
- 自分の力だけで解決できるもの
- 復習分野
- 授業で扱っている分野
例えば英語を例にとってみます。ここ最近、授業では生徒さんに精読、構文解釈の授業をメインに教えているとしましょう。
1の自分の力だけで解決できるものとしては、例えば単語帳ですね。あとは例文暗記などです。このあたりは解説をほとんどせずとも生徒さんの力だけで進めることが可能です。
2の復習分野は、来週解説する英文に関係するような文法の単元の文法問題集を解いてくるという宿題であったり、文法書に目を通す宿題です。
これは分からない部分が多少出てきたとしても次の授業で解説すればいいですから、難易度さえ高くなりすぎていなければある程度までは自分で理解させます。
3は予習であったり、復習であったりするはずで、今回のパターンなら授業で扱った英文の音読やら、次に扱うものの和訳やら、そういった内容です。
多くの新人講師は3だけを宿題にしてしまっていることが多く、この場合、単純に勉強時間が少ないということがほとんどです。
構成を一度見直されるとよろしいかと思います。
ちなみに受験学年になれば、生徒さんだけの力で進める課題が7割以上、それのサポートをするのが講師の仕事という形が普通です。
とにかく問題を生徒さんの力で解き進めてもらって、分からない部分を解説し、苦手な部分の抜けを埋めるような宿題を全体のバランスを考慮して出す、という作業の繰り返しです。
このときにもやはり無駄な時間ができないように調整しなければなりません。
また宿題が足りないことで損をするのは不真面目な生徒さんだけではありません。真面目な生徒さんこそ、宿題が足りないことでどんどんと損をしていきます。
宿題が足りていなければ、「これだけやっておけば十分なのかな?」とまだ余裕があるのにもかかわらず勘違いするかもしれません。逆に「これだけで足りるのかな?」と不安に思って効率の悪い勉強を自己流で進めている可能性もあります。
その時間をもっと効率的に過ごすことができれば成績は圧倒的に変わってきます。可処分時間をどれだけ勉強に向わせて、かつ効率の良いものにするのか、これは個別指導だからこそ丁寧に指導できる部分ですから、ここを捨てることは絶対にあってはなりません。
ここまで真面目に読んでくださった方は「とにかく大量に宿題を出せばいいんだな」と勘違いされるかもしれませんが、そんな単純な話ではありません。
宿題が多すぎると不真面目な生徒さんは一気にやる気を失い、全くやらなくなってしまいますので、徐々に増やしていくことが重要ですし、
真面目な生徒さんは宿題が終わらないことで、自分に対してフラストレーションを溜めてしまうことがありますから、優先順位をつけてあげることが重要です。
個別指導であれば、全科目のバランスを見て全科目の宿題で優先順位をつけるくらいでちょうどいいですから、そのつもりで宿題は出しましょう。
場合によっては時間割を組んで、さらに時間割通りに進まなかった場合の対処法まで処方してあげるくらいで丁度いいです。
授業時間を削ってでもこの宿題設定の時間はしっかり確保しましょう。
まとめ
今回は宿題の量について解説しました。
- 回数が十分か
- 勉強時間が十分か
宿題の構成については
- 自分の力だけで解決できるもの
- 復習分野
- 授業で扱っている分野
を意識してみてください。これらが非常に重要になります。
以下の記事に続きもまとめてありますので、ぜひ他の記事もご覧ください。