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この節からそこそこ面倒な計算もたまに入ってくることになります。ぜひ問題にもサボらずトライして、計算のテクニックを身につけてください。
置換積分は積分変数を取り替えて、難しい積分を簡単な積分へ書き換えるテクニックのことを言うと考えていただくと良いですね。
何はともあれ実際の計算を見ながら理解していくのが一番である。
例
以下の積分を積分変数を取り替えて計算する置換積分を用いて計算せよ。
\int^2_0x(3x-1)^2dx
\end{align}
さてこの積分は今まで学習したように被積分関数の部分を丸々展開して1つずつ項ごとに積分をしていっても計算できるんですけどここでは置換積分の例として取り上げることにします。
まず以下のように置き換えを行います。
t=3x-1
\end{align}
この置き換えに伴って、積分区間と微小幅\(dx\)も補正しなければなりません。まず積分区間に関しては、以下のような対応関係が成り立ちますね。
\begin{cases}
x:0\to2\\
t:-1\to5
\end{cases}
\end{align}
また、微小幅\(dx\)については以下のように変形することで\(dt\)に変換することができます。
\frac{dt}{dx}=3\quad\rightarrow\quad dx=\frac{dt}{3}
\end{align}
普段、微分の記号として使っている分数の形ですけど、このように積分変数の取り替えのときには、普通の分数のように扱うことができます。
そのように取り扱えるように微分の記号を導入したところにライプニッツさんの凄さがありますよね。また、もちろん被積分関数内の\(x\)については
x=\frac{t+1}{3}
\end{align}
と置き換えることが出来ます。これで、変数変換の全ての準備が整って、以下のようにもとの積分を書き換えて計算を簡単にすることができます。
&\int^2_0x(3x-1)^2dx\\
=&\int^5_{-1}\frac{t+1}{3}\cdot t^2\frac{dt}{3}\\
=&\frac{1}{9}\int^5_{-1}(t^3+t^2)dt\\
=&\frac{1}{9}\left[\frac{t^4}{4}+\frac{t^3}{3}\right]^5_{-1}=22
\end{align}
これくらい計算ではあまりありがたみを感じないかもしれませんね。もっとありがたみを感じるためには以下のような積分を考えればいいかもしれません。
\int^2_0x(3x-1)^{10}dx
\end{align}
10乗の展開はできないわけではありませんが、先ほどの2乗と比べれば随分手間がかかることがすぐに予想できますよね。
ここで、置換積分のテクニックを用いると容易に計算できることが以下のようにわかります。(積分変数の取り替えは全く同じ作業です。)
&\int^2_0x(3x-1)^{10}dx\\
=&\int^5_{-1}\frac{t+1}{3}\cdot t^{10}\frac{dt}{3}\\
=&\frac{1}{9}\int^5_{-1}(t^{11}+t^{10})dt\\
\end{align}
もちろんここから、さらに積分して\(5\)の\(12\)乗などの面倒な計算は待っています。
それでも元々の被積分関数に関して言えば、項が11項出てくるわけですから(\(x\)の\(11\)乗から\(0\)乗までの全ての項の積分)、それがたったの2項だけ計算すれば良くなったことを考えれば随分ありがたい話だとは思いませんか?もしイマイチピンと来ていなければ、被積分関数を展開してから積分していみてください。
改めて置換積分のテクニックを手順として確認しておきます。
- まず積分変数の取り替えのためにある種の置き換えを行った。
- 次に積分変数の取り替えに伴って、積分区間を改めた。
- また積分変数の取り替えに伴って、微小幅を改めた。
- 被積分関数内のもとの積分変数を消去するように、新たな積分変数に書き換えた。
ここまで例を使って説明をしてきましたが、これを最も一般的な形で書くことにします。(高校レベルの教科書であまりここまで真面目に記述のあるものは少ないかもしれません。)
\int^{\beta}_{\alpha}f(x)dx
\end{align}
という積分の置換積分を考えます。積分変数の取り替えとして、以下の形を採用します。
t=g(x)
\end{align}
このとき、積分区間は以下のように取り替えることができます。
\begin{cases}
x:\alpha\to\beta\\
t:g(\alpha)\to g(\beta)
\end{cases}
\end{align}
次は微小幅ですね。これも先ほどと同じです。
\frac{dt}{dx}=g'(x)\quad \rightarrow \quad dx=\frac{dt}{g'(x)}
\end{align}
最後に全ての\(x\)を消して\(t\)に置き換えなければならないのですが、これは逆関数の考え方を用いると、
g^{-1}(t)=g^{-1}\cdot g(x)=x
\end{align}
ということがわかります。要するに\(g\)の逆関数を求めてやれば、そこに\(t\)を代入することで、\(x\)を丸々\(t\)の関数として表現できるということですね。これをもともとの積分の\(x\)の位置に入れれば完成です。最終的には以下のように書き下せます。
\int^{\beta}_{\alpha}f(x)dx=\int^{g(\beta)}_{g(\alpha)}f\cdot g^{-1}(t)\frac{dt}{g’\cdot g^{-1}(t)}
\end{align}
置換積分を知っている方でもこういった一般系で書くことには慣れていない方も多いと思います。合成関数と逆関数の考え方を使うことができれば、このように置換積分を一般的に書き下すことが出来るということは知っておいてください。
とはいえ、この置換積分をただただ計算の道具として使えるようになっておけば問題ないので、どちらかというと、これを導く手順をしっかり覚える方が重要です。
問題をいくつか解くことで少し慣れていただくことにします。
問題
以下の積分を置換積分のテクニックを使って行え。
&1.\quad \int^2_0(2x+5)^4dx\\
&2.\quad \int^3_0\frac{x}{\sqrt{x+1}}dx
\end{align}
ただし、
\frac{d}{dx}\sqrt{x+1}=\frac{1}{2\sqrt{x+1}}
\end{align}
を使っていいことにします。(後で習います。)
解答
1.
まず被積分関数を\(t\)の4乗と見ましょう。すなわち
t=2x+5
\end{align}
とおきます。
そのときに、積分範囲と、微小幅の変化に注意すると以下のように変形できて、計算を進めることができます。
ほとんど、先程の例題と同じなので、例題を参考に変形するのが大事です。
&\int^2_0(2x+5)^4dx\\
=&\int^9_5 t^4\frac{dt}{2}\\
=&\left[\frac{t^5}{10}\right]^9_5=\frac{9^5-5^5}{10}=\frac{27962}{5}
\end{align}
2.
次は分母のルートを丸々\(t\)と置き換えます。
\sqrt{x+1}=t
\end{align}
微小幅の部分が少しだけ注意が必要になります。以下のようになります。
&\frac{dt}{dx}=\frac{1}{2\sqrt{x+1}}\\
\rightarrow \quad &dx=2\sqrt{x+1}dt
\end{align}
これを使うと以下のように計算を進めることができます。
&\int^3_0\frac{x}{\sqrt{x+1}}dx\\
=&\int^2_1\frac{x}{\sqrt{x+1}}2\sqrt{x+1}dt\\
=&\int^2_1 2xdt\\
=&2\int^2_0(t^2-1)dt\\
=&2\left[\frac{t^2}{3}-t\right]^2_0\\
=&\frac{8}{3}
\end{align}
この問題に関してはどのような置き換えをすると簡単になるのかを見破るところが肝です。
その肝の部分はほとんどの場合、慣れによるものなので、本来もう少し計算練習をすべき部分ではありますが、一旦ここまでにしておいて、もう1節だけ数学の準備を続けておきましょう。
関連リンク
>>YouTubeで使用可能な数学と物理の参考書「アラサー高校物理」