(※数式が見切れている場合は横スクロールしてください。)
前の節で扱ったコンビネーションの計算は展開の公式を理解するのに役立ちます。というかそのためにわざわざコンビネーションの勉強をしてもらったんですけどね。
さて、それでは例として以下の問題を考えることにします。
例
\((x+y)\)のn乗の公式を導け。
まずnが2の場合は中学数学でおなじみの以下のような公式になりますよね。
&(x+y)^2\\
=&(x+y)(x+y)\\
=&x^2+yx+xy+y^2\\
=&x^2+2xy+y^2
\end{align}
復習のために敢えて真面目に公式の導出過程も書いておきましたけど、基本的には分配法則を使って計算するだけで公式は導けます。
nが3のときくらいまでは大した苦労せずとも同様に分配法則を使えば以下のように計算ができます。
&(x+y)^3\\
=&(x^2+2xy+y^2)(x+y)\\
=&(x^2+2xy+y^2)x+(x^2+2xy+y^2)y\\
=&x^3+2xy+y^2x+x^2y+2xy^2+y^3\\
=&x^3+3x^2y+3xy^2+y^3
\end{align}
ですが、nが4より大きくなってくると公式自体を分配法則を用いて展開していくのはかなり手間ですよね。
なによりも一般のnについてこの方針で展開の公式を得ることはできないです。
コンビネーションの考え方を使うと一般のn乗についての展開公式を得ることができます。まず敢えて、n乗を分解します。
&(x+y)^n\\
=&(x+y)(x+y)\cdots(x+y)(x+y)
\end{align}
n乗というのは上の式のようにn回同じものがかけられたものですよね。
分配法則を使うと、この一つ一つの\( (x+y)\) の中から毎回どちらかを選ぶというのをn回繰り返したものが項として現れるんですけど、イメージ湧きますか?
たとえば、最初の\((x+y)\)では\(x\)を選んで、次の\((x+y)\)では\(y\)を選んで、、、n個目の\((x+y)\)では\(x\)を選んで、といった具合に選んだものを掛け算したもの以外には分配法則では出てこないですよね。
これを全通り行って足し算すればいいわけです。
もう少し一般的にいうと、このn個の \((x+y)\) の中から\(x\)をm回選んだときには、相手のyは(n-m)回出てきます。
n個の \((x+y)\) からm個の\(x\)を選ぶ選び方の総数はコンビネーションの記号を用いて表現できます。
このとき、自動的に残りの(n-m)個の\(y\)は決まるので、一般項は以下のようなものとなるんです。
\quad_nC_mx^ny^m
\end{align}
こいつらを全通り足し算すればいいと考えれば公式が導けます。
公式
&(x+y)^n\\
=&\quad_nC_nx^ny^0+_nC_{n-1}x^{n-1}y^1+_nC_{n-2}x^{n-2}y^2+\cdots+_nC_0x^0y^n
\end{align}
ただし、\(x\)や\(y\)のゼロ乗は\(1\)です。(後に指数の章で勉強します。)この公式のことを2項定理といいます。
それでは問題をいくつか解いて慣れてもらいましょう。
問題
&1.\quad (x-2y)^4\\
&2.\quad 2^n=_nC_n+_nC_{n-1}+\cdots+_nC_1+_nC_0\quad(proof)
\end{align}
解答
1.
1.\quad (x-2y)^4\\
=&_4C_4x^4(-2y)^0+_4C_3x^3(-2y)^1+_4C_2x^2(-2y)^2+_4C_1x^1(-2y)^3+_4C_0x^0(-2y)^4\\
=&x^4-4\cdot2x^3y+6\cdot4x^2y^2-4\cdot8xy^3+16y^4\\
=&x^4-8x^3y+24x^2y^2-32xy^3+16y^4
\end{align}
2.
こちらの問題に関しては先ほどの公式の\(x\)と\(y\)の両方に\(1\)を代入するだけです。
この節を読みきったということは、もうマキノさんは\((x+y)\)については何乗しても答えを出せるようになったということですね!!
ちなみに3乗くらいまでは暗記しておくのが大学受験的には普通です。
関連リンク
>>YouTubeで使用可能な数学と物理の参考書「アラサー高校物理」